側弯症(成人後の随伴症状)

脊椎が歪む状態ですが、何らかの原因により一時的に歪んでいるものは機能性側湾と呼ばれます。わかりやすい例では、ギックリ腰などの急性腰痛の痛みのために生じる疼痛性側湾がイメージしやすいかも知れません。この他にには姿勢性側湾、静力学的側湾(下肢の骨長差、先天性股関節脱臼による外見上の下肢短縮)などがあります。一方、脊椎のねじれを伴った側湾で椎間板の変形を伴い、もとの状態には戻らなくなったものを構築性側湾といいます。代表的なものは脊柱側湾の8割を占める特発性側湾症です。特発性とは原因が明らかでないということです。この他には神経や筋肉などの病気によるものがあります。

さて、小児の側湾治療に関しては専門家に委ねるとして、ここでは成人の側湾症に由来する慢性症状(痛み・苦痛など)に焦点を当てたいと思います。特発性側湾症の脊椎の湾曲は一般的に成人以降はあまり進まないといわれています。しかしながら、例え軽症度の側湾であっても構築生側湾は不可逆性ですから、もとに戻ることはありません。痛みなどの症状もあまり高い率で生じるわけではないとされていますが、年齢とともに痛みや苦痛を症状が生じる人が増加するのが現実です。

胸椎・腰椎の周囲には脊柱起立筋をはじめ、半棘筋・多裂筋・回旋筋、棘間筋・横突間筋などいくつもの細かな筋が付着しています。脊椎の回旋側湾に伴いこれらの筋は短縮と伸張を強いられる状態となります。これが筋にとって負荷となり筋筋膜性の疼痛が生じることがあります。筋の痛みは深部痛といって、痛みの部位が「明確にここが痛む」認識できるのではなく「このあたりが痛む・苦しい」などと曖昧になる傾向があります。また、筋肉の痛みは連関痛といって、離れた部位の痛みを誘発するこが多いことも特徴です。このため苦痛を感じる部分と原因部位とが離れているため、全身を観察しないと原因部位の特定が難しい場合もあります。また、脊椎の側湾に伴い腰部・殿部や頸肩部なども重心を保つために負荷・歪みが生じますから、これら周囲の筋も同様の傾向があります。また、側湾の程度が強い場合には持続的な圧迫が長期間加わることにより神経線維が損傷することによる強い痛みが生じることもあります。

痛みの認識には閾値という感受性が大きく影響します。通常時には苦痛を感じなかった人の場合でも、更年期になったり、強いストレスを長期間感じたり、他の病気の影響などにより閾値が低下すること(敏感になること)により、側湾に由来する苦痛を感じ始めることもあります。

成人の脊柱側湾症に伴う苦痛の治療は湾曲そのものを改善できるものではありません。粘り強く患者を支えることが必要となります。全身を観察により原因部位を特定し、たとえ深部であっても鍼治療は直接に患部を治療することも可能です。苦痛の軽減を図ることによりQOL(生活の質)の向上を目指します。

臨床例~側湾症 胸・背・腰・頚肩の痛み(50代女性)

胸と背中が苦しい、痛いといって来院された。症状は数年間続いている。内科や婦人科などで何度も検査を受けたが特には異常がないため更年期との関連を指摘されているという。整体、接骨、鍼にもしばらく通ったが改善しなかった。肩こり、頭痛、腰痛もあり筋緊張が強い状態である。胸椎に側湾を認め、症状の部位が側湾による負荷部位と一致すること、月経周期に伴い症状の増減があることから、双方の連関を考慮して鍼灸治療を行った。

3ヶ月の治療で身体各処(胸・背中・腰・肩などの)苦痛は軽減し、効果も持続するようになった。月経にともなう腹痛と乳房痛がるため、定期的に治療を継続した。身体の痛みは時々治療することで自覚的に良好な状態を保つことが出来た。更年期症状の軽減とともに身体各処の苦痛の自覚も減少した。更年期終了後は辛くなったら時々治療を受けに来ているが、以前に比べると症状も軽くさほど気にはならないとのことである。更年期の影響により側湾に関連する筋筋膜痛が悪化したものと考えている。

 

よくあるお問い合わせ(FAQ)

投稿記事がありません。