不育症

不育症とは、妊娠するにもかかわらず流産・死産・新生児死亡をなどを繰り返して結果的に生児を得られない状態とされています。流産が「妊娠22週未満の胎児が母体から娩出されること」とされていますので反復流産(流産を2回以上繰り返す)や習慣流産(流産を3回以上繰り返す)よりも広い概念を指しています。(この場合、hCG陽性のみで胎嚢が確認されない状態で妊娠を終了する生化学的流産は流産回数には含まれません)

流産は妊娠全体の10~20%に起こるとされ、特に妊娠初期の流産は受精卵の偶発的な染色体異常が原因と云われています。また、12週未満の流産の約80%に受精卵に発生した偶発的な染色体異常があったと報告されています。

厚生労働科学研究班の調査によれば、不育症の65.3%がリスク因子不明・偶発的流産であったと報告されています。

方針イメージ

原因とは言わずにリスク因子と呼ぶ理由は、リスク因子がある場合でも必ず流産するわけではないためです。

リスク因子とその治療法について簡単にまとめてみました。

子宮形態異常
特に中隔子宮と双角子宮が早流産のリスクを高めると報告されています。また、不妊(妊娠の成立)に関しては子宮形態異常はそれほど影響しないとされています。検査により外科的な治療が検討されます。
甲状腺機能異常
薬や食事療法による治療を行う。
染色体構造異常
12週未満の流産の原因の80%は受精卵の偶発的染色体異常と言われています。均衡型転座やロバートソン転座などの染色体構造異常が認められる場合には一定の割合で受精卵に染色体異常が生じます。遺伝子カウンセリングや着床前診断などを行うこともある。
血液凝固異常
抗リン脂質抗体陽性・第Ⅻ因子欠乏・プロテインS欠乏・プロテインC欠乏は血液凝固系の異常です。検査結果や流産回数などからヘパリンや低用量アスピリンなどの薬物治療が検討される。
リスク因子不明・偶発的流産
確立された治療法はないとされていますが、カウンセリングや支持療法(supportive care)やTLC(tender loving care)が有効であると報告されています。
●原因不明の習慣性流産の妊婦へTLCと毎週の健診を行うことで86.5%が妊娠を継続し、通常の健診のみを受けた場合は33.3%だった。
●原因不明の不育症(2回以上の流死産)の妊婦に妊娠初期ケア専門クリニックで12週まで健診を受けた場合73.8%が妊娠を継続し、通常の施設での検診を受けた場合は48.8%であった。
厚生労働科学研究の不育症研究班の報告でも流産既往が2回で原因不明の場合カウンセリングにより妊娠予後が改善する可能性が指摘されている。
欧州生殖医学会の初期妊娠に関する特別班の習慣性流産女性への対応ガイドラインでは「TLCに関しては妊娠継続への有効性が証明されていなくても行うべきである」とされている。

また、報告では原因不明の不育症の場合、既往流産回数が2回なら80%、3回なら70%、4回なら60%、5回なら50%が出産可能であり、累積的には85%が出産に至るとされています。不安やストレスの緩和のために適切に治療介入することも大切であることがお分かりいただけるかと思います。

不育と鍼灸についてですが、鍼灸師それぞれの治療法・治療スタイルによるところが大きいかと思います。不妊症不育症など生殖系の専門知識を身に着けた鍼灸師が患者とコミュニケーションをとりながら行う場合には、支持療法に近い効果が期待できます。また、一般に血管を弛緩させ血流を改善させる効果があるので血液凝固系の薬物治療と併用することでより効果が高まる可能性もあります。海外の文献では小規模なデータですが継続的に鍼灸を行うと流産率が半減するという報告があります。当室の高齢妊娠患者さんでも一般的なリスクと比較して同様の傾向がうかがえます。

当室では、可能な限り妊娠前(体外受精を行う場合には採卵前)から治療を開始します。卵質の向上を図りつつ、妊娠前から妊娠後(特に初期段階)まで継続的に身心へのサポートをいたします。これにより、妊娠前・妊娠中、場合によっては流産後に、的確な情報の提供や鍼灸治療を通じて不安やうつの軽減を図り、妊娠の継続、再挑戦への意欲の向上を促すことを目指しています。

不育症には漢方治療も有効であると報告されています。血液凝固異常やストレスや不安・うつの軽減などに効果があるものと思われます。漢方も妊娠中の服用には専門家の判断が不可欠ですので、当室では希望の方には漢方専門医を紹介しています。

 

自治体の相談センターを紹介しておきます。

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