不妊治療お休み周期におけるタイミング法の留意点

婦人科で不妊治療を受けている方の場合には、”治療自体をお休みして今周期は自分たちでタイミング法を試みる”ということは珍しいことではありません。このような方の中には、以前に自己タイミング法を試みていた経験からおおよその排卵の時期を想定されている方もあるかと思います。想定した時期に排卵の兆候がなく、ちょっと慌てた経験をした方も少なからずあろうかと思います。

また、不妊治療目的でクロミッドを連続的に使用していた方から、お休み周期に基礎体温が一向に上昇しないため「クロミッドなしでは卵胞が育たなくなってしまったのでは?」と相談を受けたことがあります。

 

不妊治療において比較的よく使用される排卵誘発剤クエン酸クロミフェン(クロミッド)について整理しておくと、妙な誤解を避け身体の中で起こっていることを正しく理解する助けになるかと思います。

 

クエン酸クロミフェンはその排卵率の高さからよく使用される排卵誘発剤です。排卵率の高さ以外にも次のような特徴がことが知られています。

 

●抗エストロゲン作用(子宮内膜が薄くなる・頸管粘液が減少する)

●半減期が長い

●子宮血流の減少

●多胎

 

≪抗エストロゲン作用とは≫

クエン酸クロミフェンの排卵誘発効果は、視床下部においてエストロゲン受容体と結合することで自分自身が分泌している内因性エストロゲンがエストロゲン受容体と結合できなくなることに由来します。(抗エストロゲン作用)

視床下部においては抗エストロゲン作用によりFSHの分泌が促され卵胞の発育は促されます。しかし、子宮内においてはエストロゲンがエストロゲン受容体と結合して作用しにくくなるため、内膜が薄くなったり、頸管粘液が減少したりすることで、精子の子宮内への侵入や着床に影響に影響することが懸念されます。

 

≪半減期の長さから想定される影響とは≫

クエン酸クロミフェンは、その服用中においてはLHサージを抑制することも良く知られています。LHサージは排卵直前に起こりますから、これが服用中に抑制されるということは排卵の時期にも影響が及ぶことが懸念されます。一般的にLHサージはクロミフェン服用終了日から5~12日後に起こることが多く、排卵は月経開始日から16~17日目もしくはそれ以降に起こることが多いようです。

排卵時の卵胞径は自然周期に比べて大きくなる傾向があり、報告により若干の違いはありますが23㎜~30㎜に達すると報告されています。

 

クエン酸クロミフェンの半減期の長さについては以前にも記しました。(フェマーラとクロミッド 参照)
もう少し詳しく整理しますと、クエン酸クロミフェンはシス型とトランス型で構成されています。トランス型は活性は低いそうですが排泄が遅く、1カ月以上血中に残存します。クエン酸クロミフェンにはこのトランス型が40%ほど混合されています。

 

人工授精やタイミング法など婦人科の不妊治療でクロミッドを使用する場合には、卵胞が一定の大きさに達するとhCG剤を投与し排卵を起こすことが一般的かと思います。この場合には排卵時期は正確に予測できますので、とりあえずが問題はないかと思います。(大きくなるまで待ち、23㎜~28㎜で排卵させた方が妊娠率が高いという報告もあります)

 

このクロミッド連用した場合には半減期や血中残存期間の長さから翌周期に残ることが十分に考えられます。連続使用後の治療お休み周期に排卵の時期が通常よりも遅れてしまうのは、残存しているクロミフェンが作用しLHサージを抑制すること、それにより排卵時の卵胞径が(現在の周期に服用していないのに)大きくなってしまうこと、、、などが考えられます。

このためお休み周期なので基礎体温しか計測していない場合には体温上昇時期が遅くなるため、卵胞の発育が悪いと誤解してしまうこともあるのではないでしょうか?

 

このような状況になってくると、頸管粘液の量や牽糸性を確認して「量が増えて、透明で良く伸びる」時期にタイミングをとるか、排卵検査薬を使用するという方法が良いかと思います。

参照 ステップダウンと排卵日の予測

 

何故遅れるのか理由を予め知っておけば焦らずに対処できるかと思います。

 

2018年05月12日