ステップダウンと排卵日の予測

高齢不妊でいわゆる体外受精治療を受けている方からステップダウンのご相談を受けました。cIVFやICSIなど高度生殖医療を数回試みたにもかかわらず結果が出なかった方からです。高度生殖医療といえども良質な胚を獲得できなければ良い結果には結びつかないので、体外受精の絶対適応(医学的に自然妊娠は不可能な状態)でなければ構わないと思います。当室の症例でも40代半ばでも根気よくタイミング法を継続して子宝に恵まれた方は何人もいらっしゃいます。

 

お話を聞いていると、病院にかかることなくタイミング法にチャレンジする場合に最も気になることは、やはり排卵のタイミングを如何にして知るかということみたいです。長年にわたり画像検査や血液検査などで排卵(採卵)時期を知ることに慣れているため不安なのは当然かもしれません。

 

実は排卵のタイミングを正確に予測することは簡単なことではありません。たとえ超音波でモニタリングしていても凡そは推測できますが正確に予測することは簡単ではありません。教科書には約20㎜で排卵に至ると書かれていますが、本当に毎周期同じ大きさで排卵しているとは限りません。また、卵胞の成長速度にも個人差がありますのでこれも一層予測を難しくしています。AIHや産婦人科でのタイミング法でhCG剤などを使う理由は確実に一定時間後に排卵を促すという目的も含まれています。

 

その他に自力で可能な排卵予測法には次のようなものがあります
排卵検査薬
基礎体温
頸管粘液

 

排卵検査薬には擬陽性や偽陰性率が約1割ほどあります。また、月経周期が21日以下や42日以上など不規則な場合にはLHサージの検出率が低下する傾向があることに留意しなければなりません。排卵時期が遅延するなど安定していない場合には使用数が増えてしまうといったデメリットがあります。また、検査薬の感度も製品によりまちまちです。陽性反応を待っていては妊娠率が最も高いといわれている排卵2日前を逃してしまう可能性も否めません。ステップダウンする場合には自分の月経周期がどのように推移しているのかを考慮しながら使用する必要があります。

 

基礎体温の場合も、“ここがLHサージだよ”というようにピンポイントで断定することは難しいです。基礎体温表のどこで排卵しているのかを超音波やLHサージのモニタリングと比較した場合になかなか一致していないと報告されています。つまり低温相から高温相になるあたりの3~4日間に排卵日が分散しているため正確な予測が難しいといえます。また、排卵が遅れている場合などには不安が募りストレスがたまるようです。

不妊妊活FAQ 排卵日の予測と妊娠可能な期間はどのように考えたらよいですか? をご参照ください

 

さて、頸管粘液を観察する方法ですが、頸管粘液(帯下)の性状を観察することで9割以上のケースで排卵時期を知ることが可能であると報告されています。頸管粘液に関する記述を参考書から引用しておきます。

*頸管粘液は血中エストロゲンの増加に伴い排卵5~6日前から増加し排卵2~3日前にピークに達する
*頸管粘液の産生はピークになると粘液の性状が変化し透明性が高く粘稠度が低下する。
*経験粘液の分泌量が最も多い日に性交渉をもった場合に妊娠率が最も高い。
*頸管粘液の牽糸性が高く透明な時に妊娠率が高い

 

これらを整理してみると排卵の5~6日前から増加し分泌量が増加し、LHサージの時期に分泌量がピークを迎え、粘液の性状が透明になり牽糸性が高くなると考えられます。

 

月経周期の中で妊娠が可能な期間をfertile windowといいます。一般に排卵の5日前から排卵当日までの6日間とされています。精子の受精可能な期間は48時間ほどという記述も見かけますが、実際には胎嚢が確認された臨床的妊娠率で「排卵日5日前約3%、排卵日4日前約12%、3日前約8%、排卵日2日前約28%、排卵日1日前約26%、排卵日約8%」と報告されています。個人差はあるでしょうが、4~5日間は妊娠する可能性があるということです。精子の受精可能期間や生存期間はその精子が置かれている環境に依存するのかも知れません。

 

このように考えますと、頸管粘液の増加は、概ねfertile windowに一致していることに気が付かれるかと思います。自力で行う排卵予測はどの方法を用いても一つの方法で正確な予測は困難ですので、基礎体温を付け、頸管粘液が増加してきたら妊娠可能ゾーンに入ったと考えて複数回タイミングをとり、検査薬を使用する場合は想定日に近くなってから、あるいは想定日を過ぎてもなかなか体温が上昇しない場合に使用する…など複数の方法を使用するのが良いのかも知れません。

 

妊娠の可能性を上げるためには、良質な精子をたくさん子宮内に入れることが大切です。さらには、それら精子に長く子宮内で生存してもらうためにも子宮卵管内の良好に保つことも推奨されます。
精子に関してはまたの機会に整理したいと思います。

2017年11月28日