精子 妊娠率を上げるために

ちょうど一年ほど前に、当室のfacebook page で

How To Get Pregnant Faster: Men Who Ejaculate Twice Within An Hour May Be More Likely To Conceive
1時間に2度射精すると妊視する可能性が高まる

という欧州生殖医学会報告された予備試験の記事を取り上げました。facebookは古くなると見つけるのが難しくなるため、本邦で人工授精に2回目に射精された精子を活用している例をも付け加えて、再整理したいと思います。英文記事を読みたい方は上に紹介した記事見出しをクリックしてください。

 

2015年に欧州生殖医学会において英国で行われた小規模な予備試験の結果が報告されたようです。予備試験とは本格的な調査研究の前に行われるパイロット研究といったところでしょうか。

 

内容をまとめると以下の通り

IUI(intrauterine insemination子宮内人工授精)を用いた方法で、73組の不妊カップルが対象となった。
•1回目の射精から1時間以内に採取された精液を用いて人工授精を行った
•その結果、妊娠率は21%となった
•これは一般的な人工授精の成功率が6%程度であることから概ね3倍の成功率といえる。
•この結果から、タイミング法など自然妊娠法でも同様の効果が期待される。

 

IUIとAIH(Artificial Insemination with Husband's Semen)とは、日本では一般的に同じことを指します。配偶者間で行う人工授精をAIHと呼びます。

 

批判な意見
•男性の精子が治療の前にすでに基準以下であるとみなされていた。
•通常の生殖力を有した男性の2回目の精液が1回目のものよりどのくらい妊孕性に富むかを判別する術がない。
•女性に使用される排卵誘発剤をクロミッドからhMGに変えていた。

 

さて、ここで現在日本で行われている人工授精について少し整理してみましょう。

人工授精の適応 

①精子量的質的異常 
②機能性不妊(原因不明不妊)
③射精障害・性交障害 
④精子ー頸管粘液不適合
•必要とされる原精液の総運動精子数 一般に1000万個以上
•処理後精液の総運動精子数  一般に50万個くらいが下限
•精子採取の禁欲期間は2~3日以内のほうが妊娠率が高い
•妊娠率 5~10%程度(背景や排卵誘発法により異なる。機能性不妊では過排卵卵巣刺激(CC・Gn)は成功率を高めるが3個以上の卵胞が出現した場合はキャンセル)

 

参考までに、不妊歴3年以上の機能性不妊のカップルのタイミング法における周期毎の妊娠率は3%程度と言われています。人工授精は体外受精に比べて費用が安く低侵襲性であることがメリットです。しかし、その成功率(妊娠率)にパンチ力がないことが問題とされてきました。

 

さて、このように情報を整理してから改めて2回目精子の記事を見直すと、そのすごさがお分かりいただけるかと思います。デザインを整え更なる研究に期待したいものです。


 

精子の老化(劣化)は射精後に始まるのではありません。射精されなくても時間の経過とともに体内で劣化します。つまり、産生されてから時間が経過している古い在庫(精子)は排して、出来るだけ産生後時間の短いものを利用した方が妊娠率が高まるのではないか?という考え方もあるということです。このような考え方が基礎になり、おそらく1時間以内射精された2回目の精子を利用するということに至ったのではないかと思われます。

 

2016年に出版された臨床婦人科産科の増刊号に、AIHに関して次のような方法が記されています。


精子の受精プロセスは、生殖路内での受精能力の獲得→hyperactivation→透明体の通過→受精 という過程を経るがすべての精子がこのようなの能力を保持するものではない。よって良好な精子の選別精製が重要となる。

1回の射精後にも約1/3は排出されずに残っている。

2回目の精子は量も数も少ないが運動性は1回目に比べて良好である。

 

これらから、

2回続けて採精し、2回分まとめて調整すしAIHを行う。

事前に採精し凍結保存した精子と当日採精した精子を用いてAIHを行う。


AIHに使用する精子を、質・量双方の点において、向上させようという試みです。

 

少し前の調査でしたが、排卵の時期によらず、性交頻度が多いほど妊娠率も高まるという報告もありました。普段から頻繁に射精することで、古い精子が少なくなり精子全体のパフォーマンスが向上するのかも知れませんね。

 

 

2017年02月20日