フェマーラとクロミッド

先日、患者さんから「今度、排卵誘発のためにフェマーラを服用することになったのですが、クロミッドと何が違うんですか?」と質問されました。なるべく簡単に整理しておきます。

 

両剤ともFSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌促すという点では同じです。通常、エストロゲンの血中量が減少するとFSHの分泌は促進されます。クロミッドとは視床下部にあるエストロゲン受容体というエストロゲンのセンサーを塞いでしまいます。このためエストロゲンが受容体と結合できなくなり、結果として脳はエストロゲンが不足していると認識し、FSHを分泌して卵胞を刺激しエストロゲンを分泌させます。一方、フェマーラはアンドロゲン(男性ホルモン)からエストロゲンを作るのに必要なアロマテーゼという酵素の合成を阻害します。その結果、エストロゲンが不足状態になりFSHの分泌が亢進します。

 

クロミッドとフェマーラの違いで重要なことは、その血中半減期の長さだといえます。クロミッドの半減期は5日~3週間と長めなのに対し、フェマーラの半減期は45時間ほどです。クロミッドは効果が長く続くため、血中エストロゲンが上昇してきてもFSHは抑制されにくく、その結果、主席卵胞以外の卵胞が閉鎖されずに複数の卵胞が育ちます。一方、フェマーラは血中半減期が短いため、服用中止後速やかにFSHの分泌が低下します。これにより主席卵胞以外の小卵胞は閉鎖されるため、主席卵胞のみからの排卵となることが多い。

 

また、フェマーラはテストステロン(アンドロゲン)からエストロゲンの合成を阻害するため、卵巣にテストステロンが蓄積します。このテストステロンがFSHに対する感受性を高めるとされています。このことが、排卵障害などの女性不妊に対するテストステロン療法と関係してくるのだと思います。

 

クロミッドは頸管粘液の減少や子宮内膜の菲薄化という副作用があるのに対し、フェマーラはエストロゲン低下により子宮内膜のエストロゲンに対する感受性が高めるとも云われています。このため服用終了後は速やかにエストロゲンが上昇し内膜が増殖します。子宮内膜が厚くなりにくい体外受精胚移植(IVF-ET)で、排卵後に移植をする場合にフェマーラを使用する理由はこのへんでしょうかね。。

2016年08月22日