腱鞘炎と更年期

50代女性。右手の母指から手首にかけての痛みを訴えて来院された。施設で介護をされているため手は非常によく使うそうである。すでに痛みを覚えてから4か月ほど経過しており、指を動かすと引っ掛かりを覚えるという。

 

いわゆる腱鞘炎とかばね指という状態である。

過度な使用は摩擦により炎症を引き起こし、腫れや痛みを生じさせる。炎症に関与するリンパ球・単球・多核白血球はサイトカインなどを放出するため、線維芽細胞が患部に集まってきます。線維芽細胞は組織の修復には重要な働きをしますが、炎症が慢性化した場合などには、組織の線維化を促してしまいます。このように腱鞘の線維性肥厚が生じることにより、スムーズな運動が妨げられ、ばね指が生じると考えられています。

 

腱鞘炎・ばね指は50代の女性に多いとも報告されています。これはエストロゲンの減少と関係があると考えられています。更年期以降のエストロゲンの減少は、動脈硬化による血圧の上昇を招いたり、皮膚の萎縮によるシワやシミの原因となったり、膣粘膜の萎縮による性交痛の原因となることは比較的よく知られていると思います。視点を変えれば、エストロゲンは組織の弾力性の維持に貢献しているとも言えます。

 

また、閉経後の女性では傷の治癒に時間がかかるようになるそうですが、エストロゲンの投与で回復は早まるそうです。

 

このように考えていると、エストロゲンの低下により弾力性が低下することにより、腱と腱鞘(滑液鞘)間の摩擦が増加したり、炎症の回復力が低下することにより50代の女性に腱鞘炎が増えているのではないかと考えられます。

 

さて、上の女性は、鍼灸(はりきゅう)治療とアイシング、毎日一定時間の簡易的固定、指の屈伸運動をバランスよく行うことで半年間ほどで症状は改善し、手術は回避できました。各治療の程よいバランスを見つけることには非常に苦労しました。鍼灸治療は局所的なものばかりではなく、卵巣機能を促すように行ったことは言うまでもありません。

 

 

 

2016年12月10日