スーパーライザー照射

不妊治療の分野でも光線治療が応用されています。光にはさまざまな波長の光線が含まれていますが、近赤外線領域の波長を使って卵子を含む細胞を活性化させる治療法がわずかながら行われています。身体の深部に光を到達させる必要があるため、近赤外線領域の波長を利用した低反応レーザー照射(LLLT)と直線偏光近赤外線スポット照射(super lizer)が行われています。身体の深部へ到達させるためには、適切な波長の選択と単位面積当たりのエネルギーを上げる必要があります。

レーザーとはレーザーポインターを思い浮かべると連想しやすいですが、レーザー装置から照射される単一波長で、指向性が高い光線です。エネルギー密度が高いため、出力を上げて一点にエネルギーを集中させることでレーザーメスやホクロの除去のような使用が可能となります。低反応レーザーとは、非常に弱い出力で照射することで、生体を活性化させる作用を医療に応用した治療法です。とてもマイルドな治療で熱や痛みを感じないため、低出力レーザーとかソフトレーザー、コールドレーザーなどと呼ばれることもあります。低反応レーザー治療では700~900nm程度(近赤外線域)の波長が使用されています。

直線偏光近赤外線スポット照射とは深部到達性の高い600~1600nmの波長域の光線を取り出しスポット状に照射する方法です。低反応レーザーは単一波長です。光受容体ごとにその吸収波長のピークが異なるため、より効果を上げるためには異なる波長のレーザーを使い分けることが必要となることがあります。一方、ワイドレンジのビーム(スーパーライザー)の場合には他波長のため一度の照射でより多くの生体反応を引き出すことが可能になるメリットがあります。

なお、直線偏光とはばらばらな光の波の方向性をそろえる光学的なフィルター処理のことです。これにより、細胞への作用が強まります。

不妊治療における両者の臨床効果は、使い方にもよると思いますが特に差はないと思われます。要は機械ですので機器の選択と使い方次第だと思います。

双方とも微弱な光線治療です。受けている方が痛みを感じることは全くありませんし、熱さすら感じることはありません。温熱療法ではなく、光治療です。理学療法などで温熱効果を期待して用いる場合の近赤外線とは全く異なる作用を期待して照射するものです。

 

生体への作用としては、次のようなことが報告されています。

細胞におけるATP合成増加(ミトコンドリア)
細胞内PHの低下
リンパ球の活性化
照射局所の血管拡張作用(温熱作用)
交感神経の抑制作用(星状神経節近傍への照射)

細胞内のミトコンドリアには多くの種類の光受容体が多数存在すると報告されています。特に卵子内には通常の細胞とは桁外れの量のミトコンドリアが存在します。

照射部位により、中枢性の作用(SGB)と末梢性の作用に分けられます。患者さんの状態により使い分けが必要です。

当室では、600~1600nmの波長帯を出力するスーパーライザーという直線偏光近赤外線照射機を使用します。

照射により期待される効果

当室の患者さんにおける症例

基礎FSHが低下する
加齢により基礎FSHが30以上に上昇してしまった方でも、治療開始後1~2か月程度で自力で標準域まで下がるケースがほとんどです。
卵胞の発育・胚の分割が良くなる
排卵誘発剤に対するレスポンスが悪くなっても、2~3か月で採卵可能あるいは採卵数を増えたケースが多い。また、胚盤胞まで分割しなかったケースでも到達するようになるケースが多い。
子宮内膜が厚くなる
過去数年間にわたり内膜が厚くならずに移植に難渋した方を2017.6~8の3カ月間に3名治療。3名とも移植可能なまでに内膜は肥厚し、内2名は妊娠。
子宮や卵巣の血流が良くなる
血管新生物質

子宮や卵巣の血流が良くなる
卵胞の発育がよくなる
胚の分割がよくなる
子宮内膜が厚くなる
子宮や卵管の蠕動運動が良くなる
AMHが上昇する

などが報告されています。

頸部の性状神経への照射を継続的に行うことにより、星状神経節ブロックに近い効果が得られると報告されています。
交感神経の過剰な興奮を抑制する効果が得られやすいため、鍼灸治療との相性が良く併用することでさらに効果的となります。

ことらもご参照ください。

光治療のミトコンドリアに対する作用

 

鍼を併用したスーパーライザーを治療の参考例

鍼はステージに関係なく通常通り行います。
光線照射は鍼治療と併用の場合には20分程度です。
治療ポイントは、患者さんの状況を把握しながら適切なポイント、照射時間を設定いたします。

採卵の2~3か月前から行う・・・週に1~2回
卵胞の発育には一定の期間が必要なため、時間に余裕がある場合には事前に治療を行ったうえで採卵に望むことが大切です。
採卵移植を行いながら、改善を目指したい・・・週に1~2回
患者さんの状況にもよりますが、通常は週に1~2回程度の継続治療を行いながら、不妊クリニックの治療を受けていただきます。
40歳以上の方・早発卵巣不全傾向の方は2~3回をお勧めします
FSHの値が高い、卵胞の発育が悪い、受精卵の分割が悪い…などの症状は2周期ほどで改善するケースが多いです。
子宮内膜を肥厚させたい・・・週に2~3回程度
重症なケースの場合、子宮内膜の肥厚には、移植予定周期の前周期(約一カ月前)から集中的に照射を行います。
週に2~3回程度の治療を集中的に行うことで難治性の内膜菲薄に対しても効果が得られる症例があります。
治療に対する反応は個人差が大きいですから、治療をしながら方針を変える場合もあります。
人工授精やタイミング法の妊娠率を上げたい・・・週に1~2回
月経周期のステージを考慮しながら継続的に行います。週に1回程度の治療で基礎体温が不安定な方や高温期が短い方などは2~3周期ほどで改善することが多いです。
不育症の治療
血液凝固系の因子の関与が予想されるため、妊娠判定後の治療も十分に行う必要があります。ARTの場合にはホルモン補充か自己排卵かなどで治療ポイントが異なります。偶発的な初期流産の場合には卵質の改善で十分なことが多いですが、反復性の場合には着床後の黄体機能の維持、血流の促進が重要となります。

どのように治療を進めていくのかは、患者さん毎に異なるかと思います。ご相談ください。