スーパーライザー照射

不妊治療の分野でも光線治療が応用されています。光にはさまざまな波長の光線が含まれていますが、近赤外線領域の波長を使って卵子や卵胞などの生殖関連細胞を活性化させるLow level laser/light therapy(LLLT)という治療法がわずかながら行われています。米国国立医学図書館の医学問題表題集によると、LLLTとは、「540~830㎚の微弱な低出力の光を用いる治療法。回復や治癒を促進するためにレーザー光やLEDなどといた低出力の光を用いる非熱的・非侵襲的な治療法」とされています。身体の深部に光を到達させる必要があるため、深部到達性の高い近赤外線領域の波長を利用しています。低反応レーザー光と直線偏光近赤外線(super lizer)が行われています。通常の赤外線照射と異なるのは、身体の深部へ到達させるための適切な波長の選択と照射方法の選択です。深部到達性を高めるには面積当たりのエネルギーを上げる必要性があります。これによる熱作用を回避する照射方法が重要となります。

レーザーとはレーザーポインターを思い浮かべると連想しやすいですが、レーザー装置から照射される単一波長で、指向性が高い光線です。エネルギー密度が高いため、出力を上げて一点にエネルギーを集中させることでレーザーメスやホクロの除去のような使用が可能となります。低反応レーザーとは非常に弱い出力で照射することで、主に生体を活性化させる作用だけを医療に応用した治療法です。とてもマイルドな治療で熱や痛みを感じないため、低出力レーザーとかソフトレーザー、コールドレーザーなどと呼ばれることもあります。日本における低反応レーザー治療では700~900nm程度(近赤外線域)の波長が使用される場合が多いかと思います。

直線偏光近赤外線照射とは深部到達性の高い600~1600nmの波長域の光線を取り出しスポット状に照射する方法です。低反応レーザーは単一波長です。光受容体ごとにその吸収波長のピークが異なるため、より効果を上げるためには異なる波長のレーザーを使い分けることが必要となることがあります。

例を挙げると、Coxが600-1000nm、flavinsやflavoproteinsが400-550nm, porphyrinsが600-700nmなど。一方、ワイドレンジのビーム(スーパーライザー)の場合には多波長のため一度の照射でより多くの生体反応を引き出すことが可能になるメリットがあります。

なお、直線偏光とはばらばらな光の波の方向性をそろえる光学的なフィルター処理のことです。これにより、細胞への作用性が強まります。

特に、近赤外線領域のレーザー光と直線偏光はフォトレセプターの吸収性が良いため、生殖領域におけるLLLTでは採用されることが多いです。

不妊治療における両者の臨床効果は、使い方にもよると思いますが特に差はないと思われます。要は機械ですので機器の選択と使い方次第だと思います。当室では細胞内代謝のバランスを考慮し、600~1600nmの波長帯をワイドに出力するスーパーライザーという直線偏光近赤外線を採用しています。

双方とも微弱な光線治療です。(ハイパワー機といっても所詮LLLTです)受けている方が痛みを感じることは全くありませんし、熱さすら感じることもほとんどありません。当室の不妊治療では非熱療法として行っています。理学療法などで温熱効果を期待して用いる場合の赤外線とは全く異なる作用を引き出すために行います。

 

生体への作用としては、次のようなことが報告されています。

  • 細胞におけるATP合成増加(ミトコンドリア)
  • 細胞内代謝の増加(オルガネラ全般)
  • 瘢痕や癒着組織の軟化(器官の運動性の改善)
  • 生殖器官の浮腫うっ血の改善
  • 照射局所の血管拡張作用(血流改善:神経抑制)
  • 交感神経の抑制作用(星状神経節近傍への照射)
  • 炎症に対する消炎鎮痛作用(抗炎症性サイトカインの増加)

細胞内のミトコンドリアにはシトクローム、ポルフィリンなど多くの種類の光受容体が多数存在します。特に、卵子内には通常の細胞とは桁外れ(数百倍)の量のミトコンドリアが存在します。適切に作用させることで”加齢による卵巣機能の低下”と呼ばれている状態が改善する例が多く存在します。(基礎FSHの低下、発育卵胞数の増加、獲得胚数の増加、AMHの増加、黄体機能不全の改善など)

また、瘢痕や癒着組織が軟化したり浮腫やうっ血、血流が改善することは、卵管や子宮の運動性の改善にもつながります。タイミング法などによる自然に近い方法での妊娠の可能性が広がります。

具体的に経験した効果

当室の患者さんにおける症例

基礎FSHが低下する
加齢により基礎FSHが30以上に上昇してしまった方でも、治療開始後1~2か月程度で自力で標準域まで下がるケースが多い
卵胞の発育・胚の分割が良くなる
排卵誘発剤に対するレスポンスが悪くなっても、2~3か月で採卵可能あるいは採卵数が増えたケースが多い。また、胚盤胞まで分割しなかったケースでも到達するようになるケースが多い。
子宮内膜が厚くなる
過去数年間にわたり内膜が厚くならずに移植に難渋した方でも1~3か月程度の集中治療で1~3㎜程度肥厚する。
子宮内膜が厚くならない方へ鍼灸に光学的治療を併用した治療例
子宮や卵巣の血流が良くなる
作用は既存の血管にとどまるのではなく、血管新生物質の増加により血管の新生が促進されています。
排卵の再開
加齢により月経が停止し、排卵誘発剤に対するレスポンスがなくなった方の自力排卵が再開した。

 

不妊治療の全てが当室の鍼灸治療だけで完結するものとは考えていません。しかし、鍼灸や光(LLLT&レーザー鍼)治療には従来の現代医学による治療にはない効果が認められます。加齢による胚の獲得や内膜の菲薄化でお悩みの場合には、早期に状態を改善し生殖医療の治療に復帰していただくことも重要であると認識しています。一人で悩まずに是非ご相談ください。

交感神経の過剰な興奮を抑制する効果が得られやすいため、鍼灸治療との相性が良く併用することでさらに効果的となります。

ことらもご参照ください。

光治療のミトコンドリアに対する作用

 

鍼を併用したスーパーライザーを治療の参考例

  • 鍼・レーザー治療ともにステージに関係なく通常通り行います。(排卵後・移植後も継続的に行います)
  • 光線照射は鍼治療と併用の場合には20~30分程度です。
  • 治療ポイントは、患者さんの状況を把握しながら適切なポイント、照射時間を設定いたします。
  • 光治療は基本的には週に1~2回のペースで継続的に行う必要があります。週に1回以下の場合には改善効果は殆ど認められません。

治療頻度の決定に際しては、AMH値、胞状卵胞数、採卵数、凍結率、基礎FSH、不妊歴、年齢などを参考にして、患者さんと相談しながら決定いたします。

採卵の2~3か月前から行う・・・週に1~2回
卵胞の発育には一定の期間が必要なため、時間に余裕がある場合には事前に治療を行ったうえで採卵に望むことが大切です。
採卵移植を行いながら、改善を目指したい・・・週に1~2回
患者さんの状況にもよりますが、通常は週に1回程度の継続治療を行いながら、不妊クリニックの治療を受けていただきます。
40歳以上の方・早発卵巣不全傾向の方・黄体機能不全の方は2回をお勧めする場合があります。
以下の症状がある方で改善を急がれる場合も2回/週をお勧めする場合があります
FSHの値が高い、排卵誘発剤に対するレスポンスが悪い、卵胞の発育が悪い、受精卵の分割が悪い…などの症状は2周期ほどで改善するケースが多いです。
子宮内膜を肥厚させたい・・・週に2回程度
重症なケースの場合、子宮内膜の肥厚には、移植予定周期の前周期(約一カ月前)から集中的に照射を行います。
週に2~3回程度の治療を集中的に行うことで難治性の内膜菲薄に対しても効果が得られる症例があります。
治療に対する反応は個人差が大きいですから、治療をしながら方針を変える場合もあります。
人工授精やタイミング法の妊娠率を上げたい・・・週に1回からスタート
月経周期のステージを考慮しながら継続的に行います。週に1回程度の治療で基礎体温が不安定な方や高温期が短い方などは2~3周期ほどで改善することが多いです。排卵状況、黄体機能の状況など患者さんの状態によって治療頻度を調整します。
不育症の治療
血液凝固系の因子の関与が予想されるため、妊娠判定後の治療も十分に行う必要があります。ARTの場合にはホルモン補充か自己排卵かなどで治療ポイントが異なります。偶発的な初期流産の場合には卵質の改善で十分なことが多いですが、反復性の場合には着床後の黄体機能の維持、血流の促進が重要となります。

どのように治療を進めていくのかは、患者さん毎に異なるかと思います。ご相談ください。