月経困難症(月経痛)

治療方針

月経に伴い生じる腹部や腰部の痛み(月経痛・生理痛)、頭痛、吐き気、貧血、倦怠感などの症状により日常生活に支障きたすために、治療を要する状態にあるものを月経困難症といいます。生理痛・月経痛とほぼ同じ意味で用いられています。内膜症や腺筋症、筋腫、子宮奇形などによる器質性月経困難症と、プロスタグランジンの産生過剰などによる機能性月経困難症とに分類されます。

表1 機能性月経困難症の主な症状
下腹部・腰部の症状 下腹部痛 下腹部緊張感
不快感 腰痛 腰部倦怠感
消化器症状 胃痛 嘔気 吐気
下痢 食欲不振
血管神経症状 頭痛 頭重感
冷や汗 心悸亢進

右の表①は機能性月経困難症の代表的な症状を挙げたものです。頭痛やイライラ症状、嘔吐、食欲不振といった症状がみられます。プロスタグランジンの産生過剰が全身性に作用し腸管運動に影響を与えたり、痛覚の閾値を下げたりするためとされています。当室では月経困難症を全身疾患として治療します。また、不安やストレスは鎮痛のために分泌される内因性オピオイドの分泌を抑制してしまうこともあるため、この部分に対する東洋医学的なケアも重要であると考えています。

  ②月経困難症と主な東洋医学的な症状
気虚 倦怠感 眠い 食欲不振 下痢
気滞 疼痛 脹悶 イライラ 抑うつ 腹部膨満
水毒 悪心 嘔吐 体が重い 立ちくらみ
お血 頭痛 肩こり 冷え のぼせ 下腹部の張り
目の周りの隈 サメ肌

表②は月経困難症の東洋医学的症状の主なものですが、当室ではその原因なども加味して、肝腎虚損、気血虚寒、寒湿凝滞、肝鬱気滞などに分類します。症状の時期や部位、痛みの種類、月経血の状態や舌診などにより判断いたします。女性の場合には手や足の冷えがある方が多いため、単純に下腹部や腰部を温めている方が多いようですが、虚実をよく判断しければイライラ不快感やのぼせが増すこともありますので注意が必要です。

鍼灸治療の目的は、器質性の月経困難症と機能性の月経困難症では異なります。器質性月経困難症(内膜症・腺筋症・筋腫・子宮奇形など)の場合には、基本的には定期的な治療により症状の緩和を目指します。(子宮筋腫の場合には症状の程度により筋腫の縮小が見込める場合もあります) 機能性の場合には、症状の程度や個人差があり一概にはいえませんが数か月程度の定期治療により治療が不要になることを目指します。もちろん、症状発現する少し前からの治療介入により、症状の軽減を図ることも可能です。

鎮痛剤やピルの服用を中止したい方など症例は豊富ですので、一度ご相談ください。また器質性の月経困難症で、疼痛のコントロールがうまくいっていない方もご相談ください。薬物治療との併用で効果が上がる場合もあります。


臨床例・・・26歳女性≫
月経時に下腹部や腰の痛みが強く、イライラや腹部膨満感がとても強くなる。鎮痛剤の服用で凌いでいたが、仕事に差し障りが生じるため婦人科の勧めでピルを服用し始めた。服用開始後は気持ち悪くなったが一時的なものですぐになれるといわれていた。半年服用しても変化がなかったので服用中止となった。以前に当室で不妊治療をしていた知人から”治療開始後2~3ヶ月で生理痛がなくなった”と聞いたので来院した。気滞血オと判断して週に1回のペースで治療を開始した。2か月間ほどは状況をみながら鎮痛剤を併用してもらった。その後は、1日ほどは痛みが生じるが鎮痛剤を服用しなくても我慢できる程度となった。8か月迄治療を継続し軽い月経痛が起きるて程度になっていたので治療を終了した。およそ半年後に股関節の痛みで来院されたので、月経の状況を確認したところ鎮痛剤が必要な痛みはないとのことであった。

≪臨床例・・・32歳女性≫
月経に伴い下腹部から陰部かけて強い痛みがある。出血量は少なく月経が遅れることがよくある。また、日ごろ疲れやすく、手足お腹腰が冷える。気血虚寒と判断して週に1回治療を行う。体質的な陽気の不足を改善すべく、食材などにも注意を払い体質の改善を促す。4か月程度で月経時の痛みは減少し始めた。半年ほどで痛み・生理周期も改善していたが、お腹や腰の冷えが強いのでさらに治療を継続。1年ほどで手足の冷えは強いが、お腹や腰部の冷えはあまり感じなくなった。月経時の症状も軽い状態が半年以上継続しているので治療を終了とした。

≪臨床例・・・29歳女性≫
月経の2~3日前から乳房が張ってイライラしてくる。月経がはじまると下腹部の痛みが我慢できないほど強くなる。3種類ほど漢方薬を試したがどれもイライラとむくみ感が増し服用を続けられなかった。オ血と判断して週に1回を目途に治療を開始する。3か月で症状は半分程度に改善した。予め、時間と費用の点から鍼灸治療の長期継続は難しいと云われていたので、再び漢方(保険)を再開してもらったところ、服用後のイライラ等の悪化もなく、月経痛や乳房の張りも軽減したので鍼灸治療は終了した。

参考)月経痛を考える

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